Community Indicator Consortiumとの
コミュニティ指標に関する情報交換会

  • 開催日時:2020年1月15日(水)14:30~16:30
  • 開催場所:品川プリンスホテルNタワー 会議室
  • 主催:一般財団法人CSOネットワーク
  • 助成:国際交流基金 日米センター(CGP)

1. 開会

定刻になりましたので、CIC情報交換会を始めさせていただきます。CSOネットワーク長谷川と申します。

CICは米国を拠点に、地域社会の課題を解決する鍵として地域指標を活用し、参加型社会の構築に向けて実践や研究を積み重ねてきたネットワーク組織です。

シャンタルさんは2005年の設立当初からCICに関わり、現在は事務局長を務めておられます。情報提供や情報交換の場を積極的に設けて、住民参加による持続可能な社会づくりを広げていこうとしておられます。

ラウルさんは、CICのメンバーでテキサス州オースティンにて活動する、コミュニティアドバンスメントネットワーク:CANという団体で事務局長を務めておられます。CANは26の組織から成る協議会ですが、参加型による地域目標・地域指標の策定を行い、地域課題の解決を進めています。

お二人の自己紹介はそれぞれのプレゼンテーションの冒頭でしていただくとしまして、本日は地域活動に関わりのある方、強く関心を持たれている方にお集まりいただいているので、最初に皆さまから自己紹介をお願いできればと思います。

(参加者自己紹介)

まず、シャンタルさん、ラウルさんに20分ほどお話しいただき、その後それぞれ20分ほど質疑応答をする形で進めていきたいと思います。それではシャンタルさんよろしくお願いします。

2. CIC報告
①「コミュニティアクションの基礎としてのコミュニティ指標」
コミュニティ・インディケーター・コンソーシアム 事務局長Chantal Stevens (シャンタル・スティーブンス)

今回ここに来ることができて大変嬉しく思っております。国際交流基金の皆様、CSOネットワークの皆様、黒部の皆様、私がここに来るサポートをしていただきありがとうございました。

最初に私たちCICの紹介から始めさせていただきたいと思います。そして私たちが何を学び、研究してきたかについて話していきたいと考えております。若干、先にお送りしたパワーポイントと内容が違いますがご了承ください。

CICについて、私たちの活動の一大イベントが年次大会です。地域指標に関する情報を交換したり、議論したり、ネットワークを広げたりするためにこうした情報交換会を開いています。セミナー開催や、冊子づくり、学術論文の作成も行いました。地域指標を作る上で参考となる、地域プロジェクトデータベースと呼ばれるものも作っています。そこに約600の指標を活用した取り組みを掲載しています。全てが活発に活動しているわけではないですが。その他地域指標を活用した素晴らしい取り組みに与える賞をつくり、この賞を広く発信することで、活動を広く知ってもらうこともしています。また、地域指標プロジェクトに取り組んでいるカナダの団体にインタビューを行い、その活動や成果、課題について聞き、その中からわかってきたことをまとめるというようなこともしています。

私たちはこれまで何を学んできたのかについてお話ししたいと思います。私たちは、プロジェクトに関わる人に、7つの質問をしています。自分たちにどれだけの力があるか、まず認識してもらうようにしています。質問は資料にもありますが、1)この取り組みが目指している目標は何か 2)この分野で既に似たような取り組みをしているグループはあるか。もしあれば、一緒に協力することはできないか 3)地域でそのような取り組みをする必要性を私達はよく理解しているか 4)私たちはこの考えに基づいてしっかりと取り組んでいるか 5)私たちが持つこの取り組みに貢献できる資源は何か。その期間はどのくらいか 6)私たちと地域や他の地域団体との関係はどうか 7)私たちのこの取り組みにおける役割は何か、といった問いです。これらの質問は、全ての人々が理解しているかを確認するためのものになります。小さなグループが大きくなった際にも、他の人が驚かないように、あらかじめ周知し団体内で共有しておくことが必要です。CICの取り組みは期間コストがどれくらいかかるかを長期的に考えていくものです。次は外部に対しての質問になります。地域の人に問いかけ、団体の能力を外部の人に確認してもらいます。リーダーシップがあるかなどを確認してもらう問いになっています。

私は2つのことをプレゼンテーションで強調しています。地域指標はデータであること、そして地域であるということです。地域であるということをしっかり捉えたものであることが重要になります。やり方は沢山あります。紹介するのは「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という方法です。もし私たちが人々について測定しようと思った時、その人たちにもテーブルについてもらって、しっかりと地域について教えてもらうことが必要になります。

一番大事なのは組織が持続的で皆が同意して取り組んでいること、二点目がパートナーシップ、そして地域の活動に参加していることが重要になります。常にリニューアルすることによってクォリティを高めていくことにつながると考えています。

指標の作り方には色々ありますが、重要な手法として視覚化があります。視覚化により、全体像を整理することが良い導入になります。次に大事なのはプロセスです。イベントに来てくれるボランティアに敬意を持ち、会議の際にはちょっとした食べ物を出し、なんのために彼らがここに来ているのかに敬意を持つことが大切です。次の4つはどこにいくかについてですが、自分たちでイベントを企画するだけでなく、他のNPOが開催する会合に参加する、さらに地域のイベントに自分たちも行く、ビジネスや政治のイベントに出ていくのも一つのやり方です。次に使用可能なテクノロジーを使うことです。日本は技術が発達していますがアクセス可能なメディアで発信することが大切です。インスタグラム、フェイスブックなど、人々が使っている誰もがアクセスできる媒体で情報発信することが大切です。

こちらをご覧ください。IAP2の市民参参加の段階を示した非常に優れたモデルです。今回はこれを用いて考えていきたいと思います。「inform」は私たちの方からチラシやサイトで情報を発信すること、「consult」は地域の人に対してアンケート等を行い、地域の人の意見を聞きます。市民からとこちらからの双方からのコミュニケーションを指しています。米国の政府などもそうですが、市民から意見を聞いてそこで止まってしまうことがよくあります。私たちは「involve」につなげ住民を関わらせなければいけない、ということは双方向から会話をすることが大切です。市民から答えが来たら市民からの答えに沿ってプランを作成するという必要があるのです。その次には「collaborate」協業とも言いますが、関与してもらって議論する、地域と共同で何らかの決定に持っていくという流れです。この協業というところをぜひ皆さんは地域の人と達成してもらいたいと思っています。「Empower」というのはまれな例ですが、地域に対して権限を渡すというものです、なかなかレベルが高いので達成することは難しいですが、先ほどの「collaborate」に関してはぜひ双方向の会話を持って達成していただきたいです。

スライド6枚目には、地域指標のプロジェクトに共通で見られる課題をあげてあります。最初は資金の枯渇ですが、皆さんはどうでしょうか、アメリカの方が厳しいかもしれません。子ども支援は資金が集まりやすいですが、地域指標となると資金集めは難しくなります。

プロジェクトを始める際に、コストと期間を見積もり、どのくらいのテクノロジー、スタッフが必要かを、特に長期のプロジェクトの場合は初めに把握しておくことが重要になります。データを1〜2年提供しただけではあまり意味がありません。10年、20年に亘って行うことで初めて意味が出てきます。地域に対しては無償で、それ以外の第三者には有料化することも一つのオプションです。あとはパートナーとの関係性の維持も大切です。地域の人が参画しているのを意識してもらうには地域にどんな人がいるかを意識してもらうことが重要です。そのためには人口統計データを駆使することが必要です。今みなさんが取り組んでいる「5Goals for くろべ」でも40代以下の参加人数が少ないとお聞きしました。その地域には40代の人が多いのか、それとも家族層が多いのか、高齢者が多いのか、これらのことを見極めることが重要になります。

地域に新しいネットワークを構築しようとする際、既存のネットワークを活用することも大切です。大学や地域のスポーツ施設などを活用することで、楽に特定の年齢層や人種の人にアプローチできます。巻き込んでいく人たちの中には専門家も必要ですが、地域の人との間でバランスを保つことが必要になります。専門家は自分たちのゴールを指標にどのように結びつけるのか、達成の道筋を検討する際に必要です。

しかし、地域について知識を持っているのは地域の方々です。一方がもう片方を支配しないようなバランスを築くことが大切です。実際のデータの裏に地域の人たちが存在していることを忘れてはいけない。そうした意識を持ってデータを見ていく必要があります。

ボランティアメンバーの疲弊について、最初に委員会でビジョンを立案する際には意気揚々だったボランティアが何度もミーティングを重ねるうちにやる気をなくすことがあります。重複したリクエストは行わないよう気をつけましょう。小さなことであっても貢献や進捗を認めて賞賛する、そしてあらゆるやりとりにおいて効率性と時間厳守を徹底すること、ボランティアメンバーには、あらかじめ予定されている時間を伝え、それを尊重する、可能な場合には報酬となる資金源を探すことです。

その他の課題として、リーダーシップの問題があります。プロジェクトも長期に及ぶとリーダーシップの問題が生じます。ラウルさんのCANのプロジェクトも数年前に同じ問題に直面しました。属人化してしまうとリーダーがいなくなることでプロジェクトが死に絶えてしまうケースがあります。最善、最新と呼んでいたプロジェクトがありましたが属人化していたため、素晴らしいプロジェクトであったにも関わらず死に絶えてしまいました。この問題には、たった一人でリーダーシップを発揮するのではなく、複数のコミュニティメンバーに関与してもらいリーダーシップ
の負担を分けておくことが有効です。
プロジェクトも生き延びることができるのです。

ウェブサイトは指標や他のプロジェクトにおいても重要です。文字が少なく、目立つ色使い、人目をひくようなデザイン、明確さとクリーンさも重要です。見る人のことを常に考え、適切なメディアを使うこと。少ない方が伝わりやすく、よりシンプルにすることが大切です。カラーとグラフは慎重に使うことです。

<質疑応答>

Q

私たちの組織も協議体で、事業は行っていません。みんなでどのような取り組みが有効かを考えるのですが、無償でボランティアでやっている人のモチベーションと有償のプロフェッショナルとをどのように組み合わせていけば良いでしょうか。

シャンタル

コミュニティ指標の活動に最初に関わったのはシアトルのダウンタウンでした。午後2時の会合にも関わらず、お茶屋お茶菓子も提供しない、デイケアも提供しない中、家族や仕事を抜けて参加してほしいと言っていました。集まるはずがありません。そこでまず開催時間を夜の7時からとし、デザートを用意し、デイケアや交通費を提供するなどシンプルな変更を行いました。専門家には不都合でしたが、コミュニティの人たちにとってはその時間が良いということで、その時間に開催しました。それ以外にも会議で行う内容や参加前にどのような準備が必要かなどの情報も事前に伝えるようにしました。専門家として呼ばれているわけではなく、地域住民として呼ばれているとわかってもらうこと、彼らの発言や意見がプロセスに組み込まれることをあらかじめ伝えるようにしました。それ以外にもちょっとした成果を皆でお祝いすることもありました。

ラウル

ちょうど日本に来る前にお祝いのイベントがありました。個人や団体で協働してうまくいったことに対して表彰を行ないました。地域の人だけでなく、スタッフにとっても地域の人の熱意を感じられるとてもよいイベントでした。

Q

シャンタルさんがおっしゃった事前準備とはどのようなものでしょうか。

シャンタル

事前に提供するものとしては地域の基礎統計になります。指標はコミュニティの人と共に作るものです。事前に指標を作ることは民主的なやり方とは言えません。そのため、事前に統計データを渡すのが良いと思います。健康状態の改善に取り組もうというのであれば、例えば心臓疾患の人は多いが糖尿病やがんの患者は少ない、といったデータを渡すことによって指標を作る際にも役に立つと思います。

Q

アメリカにも日本と同じ悩みがあると思いました。地域の中で、住民とアクションを起こそうとする際に、日本では、リーダーを誰もやりたがらないことがよくあります。同じ人が多くの活動のリーダーを兼務するケースも多いです。リーダーをどのように見つけていけば良いのでしょうか。

シャンタル

リーダーはcollaborative であり、servantであるという考え方があります。物事を進めやすくするために、実現するために動くというタイプのリーダーです。リーダーになりたい人がいなければ、責任を細かく分けて取り組むことも一つの方法だと思います。コレクティブインパクトという考えをみなさんはご存知かもしれませんが、リーダーは表に出ないで裏で色々調整するという役割だと考えて取り組んでもらうことも大切だと思います。

今田

servantリーダーシップという考えが日本でも20年くらい前からあります。日本サーバント協会もあるのでご覧になると良いと思います。リーダーは表に出るのではなく、表に出る人を支える、それがリーダーの役割という考え方です。コレクティブインパクトの成功には支える組織が必要で、リーダーシップに対する考え方を少し考え直すことによってリーダーの役割や立場も変わって来ると思います。

Q

年齢層が高いほど、リーダーについては固定概念に縛られている状態です。

今田

日本だと年上の男性が担うというケースが多いですね。

シャンタル

リーダーは少し意識的に身を引いて、人々に行為を委ねる構造を作ることが大切だと思います。ボスのように支配することはよくないと思います。

② パートナーシップで進める地域づくり テキサス州「CAN」の取り組み
コミュニティ・アドバンスメント・ネットワーク 事務局長 Raul Alvarez (ラウル・アルバレズ) 

みなさんこんにちは。ラウル・アルバレスです。Community Advancement Network:CANの事務局長をしております。ここに来ることができて本当に嬉しいです。ご招待ありがとうございます。テキサス州オースティンに住んでいます。テキサス州はアメリカ合衆国の南部に位置しメキシコと長い国境を接しています。オースティンは真ん中ぐらいに位置しています。オースティンの絵葉書には州議事堂や街の中心を流れるコロラド川、公共の温泉プールが描かれています。テキサス大学オースティン校も有名です。

人口統計を共有したいと思います。年齢、人種による統計をご紹介します。人種はアメリカにおいて大きな課題です。18歳以下の人口の60%以上がマイノリティであるのに対し、65歳以上の高齢者になると60%〜70%を白人が占めるようになります。このような人口統計から子どもと高齢者とでは全く違った戦略を立てる必要があることがわかります。

私たちは26の団体のパートナーシップによって成り立っています。行政、教育機関、ヘルスケア、経済開発など様々な団体が連携しています。専門性が様々である中、どうやってコミュニケーションをとるかが、一つの課題です。CANでは、課題を共有しより良く理解するために対面で集まるようにしています。

パートナーだけでなく、コミュニティの人を巻き込むために様々なグループがあります。ダッシュボードをレビューするチーム、改善をサポートするチーム、学者チームや連携先を見つけるチームなどです。地域評議員会を通じて地域の声を聞くようにしています。

これがオースティンの4つのゴールになります。ゴールはCANのパートナーシップにおいて重要なものです。この枠組を作るのに丸1年かかりました。いくつもの対話や戦略的な話し合いをしました。ビジョンを作り、これらのゴールを元にいくつかの指標を作りました。最初にビジョンがあり、それをどのように評価するかが後からついてきました。

ビジョン「平等で機会にあふれたコミュニティをつくる」の下、「安全で公正で参加できていること」「基本的なニーズが満たされていること」「健康であること」「能力を十分発揮できること」の4つのゴールを掲げています。

私たちが地域の課題にどのように取り組んでいるかを紹介します。こちらは私たちの報告の中で貧困に関して調べたものになります。このダッシュボードでは、貧困率は12%と報告されています。5年前のデータと比較します。その年のデータのみを見るのではなく、過去からのトレンドを見ることも重要です。その場合の問題はどの指標に5年分のデータが蓄積されているかということです。できるだけ5年分のデータのあるものを活用しようと心がけています。我々の目標値は10%ですが現状は12%、改善は示されていますが、目標値までは達成できていません。この取り組みを続けていけばいずれ目標は達成できると考えています。ダッシュボードを見ているだけでは貧困を問題視しなくても大丈夫と考えてしまいます。しかし、経済的な格差は人種間で出てきています。貧困に陥っている少数派にも気を配らないといけません。地域の指標に関わってもらう時に重要なことは、地域の人にとって、指標が地域のみんなの状態を反映したものであると信じてもらえないと、いくらデータを提供しても信用されなくなります。

以前は、データは持っているだけで、ダッシュボードに組み込まれていませんでした。私が事務局長になってから地域の人の意見を聞いて、ダッシュボードに入れるようにしました。私たちのダッシュボードは、私たちが重要とする課題を踏まえ、報告書の内容、取り組み、計画について表現するようにしています。印刷版は28ページですが、あまり関心を惹かないので、分野ごとに3つか4つの短いレポートに分けて発行しようと考えています。リサーチ内容や課題など人によって読みたい部分が違うからです。以前は、人々の情報へのアクセスが難しいと言われていましたが、今は簡単です。モバイルフレンドリーにし、ウェブのデザインを変えることでアクセス頻度は35%アップしました。

それで私たちの指標を活用した取り組みについてお話しさせていただきます。一つは、幼稚園への準備性という指標についてです。公立学校の教育を受ける前の5歳の時に学習面や情緒や社会性がどれだけ発達しているかを指標にしています。これが不足していると、その後その子が成功することが難しくなります。データではこの指標は目標値に達していません。状況は悪化しています。この状況に対し「2000日の旅路」という取り組みを立ち上げました。United Wayが資金だけでなくファシリテイトも担っています。産まれてから6歳までの約2000日が、人間の成長において最も影響力のある時間と考えています。もちろん望む結果はまだ出ていないのですが、取り組みそのものは成功だと考えています。この取り組みを支える組織は、協議会の他に、15人くらいのリーダーチームや、子どもを対象とした教育団体を支援するチームもあります。ステイクホルダーグループには地域の親御さんも含まれており、サービスを提供する人だけでなく、より多くの方々に関わってもらいたいと考えています。

それぞれの団体が他と繋がらずに活動することを避けたいので協議会という組織にしています。プランニングのプロセスは典型的なものです。都市計画やプログラミングの世界で使われているものです。ここで重要なのは、期待に対してどのように成功を示していくかです。何か始まると人々はすぐに成果が出ると期待します。この取り組みについては9ヶ月間で評価方法を決めて、6ヶ月かけてプランを作成し、実施してから1年が経とうとしています。これでも早い方です。我々が取り組みに着手する前に計画前のプランがありそこを起点として始めたので。

対話に地域の人をどう巻き込むかについてお話しします。人は自分の話を聞いてもらいたいという欲求があります。一度自分の話を聞いてもらえない経験をすると再び参加する意欲は削がれてしまいます。ケータリングファンデーションが提唱する「審議の対話(Deliberative Dialogue)」というものがあります。トレーニングを受けたモデレーターが進行する対話の場も含まれます。1グループ8,9人の少人数による対話で、お互いの意見に耳を傾けインプットも効果的に行われます。難題を話し合う際にはこの形を使います。公平性という問題はとても重要です。議論がヒートアップすることも多いですが、少人数での審議の場を設けることで異なる意見が出ても生産性のある対話の場を作ることができます。今では、CAN以外の人々も巻き込んで審議を行えるようになってきています。例えば「安全と司法」というテーマだと、犯罪に関心のある人たちも巻き込めるようになっています。今まで関わったことのない新しい人たちにも参加してもらえるよう常に努力しています。

CANのパートナーでE3アライアンスという団体があり、若者の大学やカレッジ等での成功例や課題に関する「審議の対話」を主導しています。ダッシュボードでは緑(Yes)になっており、目標値に到達できるペースで状況が順調に改善していることが伺えます。

しかし、実際地域の人々は、経済成長における恩恵を受けていないと感じています。オースティンはアメリカ各地から色々な人が移り住んできています。ダッシュボードではうまくいっているように見えても、まだまだ取り組むべき課題は沢山あります。

最後に、リーダーシップをどのように育てていけば良いかについてお話しします。来年度CANがすべきこととして地域の声にもっと耳を傾けることが挙げられています。そこで、一人一人が、地域のメンバーや家族に対してリーダーシップを発揮することで、地域の声が掬い上げられていくと考えています。まずは、家族の中でリーダーになり、それができるようになったら地域の中でリーダーシップを発揮する形になることを期待しています。

<質疑応答>

Q

ありがとうございました。住民の方々の声を聞きたいと思うのですが、どのようにアプローチしていけば良いのでしょうか。

ラウル

オースティンの成功例から考えられるのは、サービス事業者との関係です。サービス提供者が家族や個人にリーチしており、そこからのフィードバックも持っているので、サービス事業者と連携をとっていくのも良いやり方だと思います。

シャンタル

先ほどお話ししたインタビューでは、我々も革新的なリーチをしました。保育園やその他小売店舗にチラシやポスターをおくところまでリーチを伸ばしました。通常ならミーティングに来ない人々にまでリーチをかけたいならば、かなり工夫して頑張らないといけません。ターゲット層に対してアプローチしたいならば間に誰か入ってもらうことも一つの方法です。生徒の保護者を対象にしたいとき、学校の先生はその一例でしょう。何を我々が期待しているのか、期間はどれくらいを予定しているのか、きちんと提案することも大切です。

Q

CANはどんな団体と関わり合ってどのように問題解決に取り組むのでしょうか。

ラウル

指標のダッシュボードの中で赤字はうまくいってないという表示です。赤字になっているところがあればそこに我々は尽力します。しかし、すでに効果的な取り組みが行われていうケースもあります。その場合は、私たちは、取り組みが重複することを避けるために、その取り組みのサポートを行います。ダッシュボードの中でそれぞれの指標に携わっている組織を一覧に出すようにしています。

私のパートナー団体も、いかに多くの人に関わってもらうかに悩んでいます。そこで、私たちは、パートナーに私たちの取り組みを紹介し、私たちのリソースを活用してもらうよう努めています。

ここ3年は地域の中で母国語が英語ではない人に対して取り組んできました。ワークフォースディベロップメントというものがあり、人々がより高収入を得られるようサポートすること、それに伴って指標もよりよい結果をだすと考えています。

Q

つまりラウルさんはコンサルのような役割を果たしているのですね。

ラウル

組織、家族や地域に対して変化する機会を提供しています。何を提案しなければいけないかを検討するのが私たちの役割だと考えています。私たちの10倍の予算を持っている団体もあります。与えるインパクトも大きいので、私たちと連携して、新しいパートナーシップを築くようにしています。パートナーに対して情報を提供することこそが私たちの価値であると考えています。

時間になりましたので、ここで終わりにしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

記録:CSOネットワーク インターン 松下義人

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