国際会議「誰も取り残さない:衡平性かつジェンダーの視点でSDGsを評価する」
3月15日〜17日、ニューヨークにて“No one left behind. Evaluating SDGs with an equity and gender-responsive lends”が開催されました(主催:UN Women、Eval Gender+、国連評価グループ(UNEG)、UNICEF等。会場:フォード財団、UNICEF本部)。参加者は国連各機関の評価、統計部門の担当者や、評価やジェンダーに取り組む各国専門家、CSO代表など約100名程度が参加し、日本からは外務省ODA評価室、JICAジェンダー平等・貧困削減推進室、(一財)CSOネットワーク(高木リサーチフェロー)が参加しました。
会合の目的は、3月11日に国連統計委員会にてSDGs指標(indicators)が合意されたことを踏まえ、複雑かつ広範囲な目標・ターゲットを含むSDGsの最も根幹をなすコンセプト、”No one left behind”を効果的に推進していくための評価のあり方を、衡平性かつジェンダーの視点から議論するというものでした。主な論点としては以下の通りです。
- 極度の貧困人口の残り半分を削減するには脆弱層の分析が不可欠であり、効果的なアプローチが行われているかをチェックする評価の役割が重要(そもそもMDGs達成の評価を十分にできなかった教訓あり)。各国が国内での評価体制を早急に整備し、衡平性かつジェンダーの視点での評価から得られた示唆を政策に還元するエビデンス・ポリシー・サイクルを確立することが2030年までのSDGs達成に不可欠。
- SDGsにおけるジェンダー指標は目標5が中心だが、他分野にまたがっており、全ターゲットの34%、230 Indicatorのうち32%をジェンダー指標が占める。女性の雇用への影響など副次的な効果の測定も踏まえ、評価手法の革新をしなければ適切な評価ができない。
- 課題としては、「誰も取り残さない」とは統計的にはカバレッジ拡大と脱集計化を意味するが、社会・文化的な属性のデータが不足していること、ICTの普及によるデータ革命・ビッグデータの活用等の既存アプローチを超える統計・評価手法の確立、複雑なSDGsに対応するための各国の統計・評価キャパシティは不十分であり南南・三角協力を含む国際社会の協力が求められていること、脆弱層に日々アプローチしているCSO等を含むあらゆるステークホルダーとの連携促進、各国の国会議員の評価に対する理解を深めること(他方で脆弱層は政治的に疎外されていることが多いことに留意)、政府の統計で捕捉されにくい難民が無視できない規模に拡大していることなどが指摘された。
終了後、Eval SDGsに参加する国連機関、評価関係者、CSOのコアグループによるFace to Face Meetingが開催され、約20人程度の参加があり、今後のSDGs評価に関する活動について議論しました。
SDGsの各目標に込められた「誰も取り残さない」という理念を、今後各国にて政策的に実現していくためには、国レベルから地域レベルでの取り組みにまで範囲を広げた評価活動が重要となってくるとの認識が国際的に共有されており、市民社会の役割も必然的に重視されていました。他方で、国際的に合意されたSDGsをローカルな課題として捉え評価分析していく試みはまだ限定的であり、今後の実践と経験の共有が期待されています。