「責任あるサプライ・チェーン」:G7 ⾸脳宣⾔に対する市⺠社会の⾒解
私たち市⺠社会の下記7団体は、「責任あるサプライ・チェーン」の課題が喫緊の問題であるにも関わらず、G7伊勢志 摩サミットで主要なアジェンダとして扱われなかったことに関して、深い失望を表明します。
「責任あるサプライ・チェーン」の課題は2015年のG7エルマウ・サミットで深く議論され、G7諸国は「国連ビジネスと人 権に関する指導原則」にコミットしました。さらに、G7 各国首脳は、透明性の向上、より良い労働環境の促進のための苦情処理メカニズムの強化、また⺠間セクターによる人権デュー・ディリジェンスの履⾏の必要性を強調しました。
伊勢志摩サミットで提出されたG7 伊勢志摩進捗報告書では、G7諸国が講じた対策が記載されたものの、世界のサプライ・チェーンでは⼈権侵害、環境破壊、劣悪な労働環境が依然として続いているのが現状です。市⺠社会は、伊勢志摩サミットがこの現実に向き合い、G7 諸国による効果的で、意義のある対策に向けたコミットメントの強化を繰り返し要求してきました。しかしG7 伊勢志摩サミットでは、「責任あるサプライ・チェーン」がアジェンダとして取り上げられることはなく、首脳宣言では、「貿易」の項に「我々は、国際的に認められた、労働、社会及び環境上の基準が、世界的なサプライ・チェーンにおいてより良く適⽤されるよう引き続き努⼒する」との一文が盛り込まれたのみでした。この言及は到底十分なものとは言えず、課題が詳しく議論されたとは考えられません。
私たち市⺠社会は引き続き、G7各国政府に対して、以下の措置を取ることを求めます。
・G7 諸国は、エルマウ・サミットでの約束を完全に実⾏するための措置をとること。また、次回G7 での報告に向けて、伊勢志摩進捗報告書記載の指標を踏まえ、必要なデータを収集し、明確な評価を実施すること。
・サプライ・チェーンの透明性が極めて重要であることを強調し、労働者の権利の尊重と保護を促進すること。
・すべてのステークホルダーとの意味ある協議に基づき、効果的な「国別⾏動計画(NAP)」を策定することに よって、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」を実施すること。
・OECD 各国連絡窓口(NCPs)のピア・レビューを義務化することにより、各国連絡窓口による苦情対応システムを強化すること。
・世界のサプライ・チェーン上での労働者の社会的保護の侵害と児童労働のリスクに対処する有効な措置をとること。
私たちは、今回のサミットで議⻑国となった⽇本政府が、「責任あるサプライ・チェーン」の課題について積極的な役割を果たせなかったことを残念に思い、未だ「ビジネスと⼈権に関する国別⾏動計画」の策定準備プロセスを開始していない⽇本政府に対し、速やかに国別⾏動計画の策定に取り組むことを強く要請します。国別⾏動計画の策定は、2020 年東京オリンピック・パラリンピックのホスト国である⽇本にとって、とりわけ喫緊の課題です。
また、私たちは、イタリアで開催される次回のG7 サミットにおいて、「責任あるサプライ・チェーン」が議題として取り上げられることを強く望みます。加えて、次回のサミットにおいては、侵害を受ける人々、NGO、労働組合と国際労働団体を含む市⺠社会の関係するすべてのステークホルダーとの意味あるエンゲージメントの仕組みを、G7サミットに至るプロセスの中で、またG7 サミット会期の中で、さらにG7サミットの後にも創り出すことを、G7諸国に強く要請します。
2016 年6月10日
一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター【ヒューライツ大阪】
Business & Human Rights Resource Centre
一般財団法人CSO ネットワーク
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
Human Rights Watch
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
特定非営利活動法⼈ワールド・ビジョン・ジャパン
【PDF版】
声明文 責任あるサプライチェーン:G7首脳宣言に対する市民社会の見解
Responsible Supply Chains: Civil Society Response to the G7 Ise-Shima Leaders’ Declaration