「コーポレートガバナンス・コード改訂についての パブリックコメント」を提出しました。

05.11


CSOネットワークは、2021年5月7日付で東京証券取引所上場部にコーポレートガバナンス・コード改訂についての以下のパブリックコメントを提出しました。

 

コーポレートガバナンス・コード改訂についてのパブリックコメント

 

2021年5月7日

 

東京証券取引所 上場部 御中

一般財団法人CSOネットワーク

1.基本原則2「考え方」

★意見:本案に賛成であるが、下記の一分追加修正(赤字下線部分

2段落目

また、「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務 情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加、また「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた国別行動計画が各国で策定され、我が国でも2020年に策定されるなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期 的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている。こうした中、我が国 企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である。

 

◆理由

サステナビリティ課題については、「ビジネスと人権に関する指導原則」も重要であり、現在の社会的要請内容としては欠かせないと考える。

 

2.補充原則2-3①

★意見:本案に賛成であるが、下記の一部追加修正(赤字下線部分

補充原則2-3①

取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、企業活動からの影響を受けている人々の人権の尊重、従業員の健康・労働 環境への配慮や公正・適切な処遇、サプライチェーン全体で公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組む検討を深めるべきである。

 

★理由

「人権の尊重」の文言のみでは、求められている趣旨が明確ではないことからの追加、また「取引先との公正・適正な取引」についても、「投資家と企業の対話ガイドライン(改訂版)」1-3にあるように、サプライチェーン全体とした方が明確である。

 

3.補充原則2-4①

★意見:本案に賛成であるが、一部追加修正(赤字下線部分

補充原則2-4①

上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。特に、プライム市場上場会社は、女性共同参画の観点から、取締役として女性複数人が選任されるべきである。

また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

 

◆理由

「投資家と企業の対話ガイドライン(改訂版)」の【取締役会の機能発揮】3-6.で 「取締役会が、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、適切な知識・経験・能力を全体として備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性を十分に確保した形で構成されているか。その際、取締役として女性が選任されているか。」があることに合わせて追加することによって、現状なかなか進まない実務の取組みを促すことができると考える。

 

4.補充原則3-1③

★意見:本案に賛成であるが、下記の一分追加修正(赤字下線部分

補充原則3-1③

上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについて、その目標設定やそれを測る指標の明示、さらにサステナビリティ委員会の設置、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権デュー・ディリジェンスの導入・実施などの取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。

特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、カーボンニュートラル(脱炭素)に向けた行動計画の開示など、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

 

◆理由

(1)現在、世界は気候変動、海洋汚染、資源の枯渇などの環境課題、あるいは経済格差、貧困、差別、ジェンダー平等などの社会課題があふれており、持続可能な社会に向けてさまざまな主体が取組んでいる。 また、日本政府により2020年10月に初めて策定・公表された「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)においても、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、「指導原則」その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるステークホルダーとの対話を行うことを期待すると述べられている。いち早くNAPを策定した欧米諸国においては、人権デュー・ディリジェンスに関連した法制化の動きも加速しているところである。従って、企業は持続可能な社会の実現に向けて、SDGs(持続可能な開発目標)への取組み、ESG投資への対応などの取組みについて、自社の事業活動及びサプライチェーン全体において、目標の設定やそれを測る指標の明示をすべきである。なお、現在、国際的にも情報開示のルール作りが行われていることも考慮する必要がある。

(2)特に上場会社においては、サステナビリティに係る取組みを促進するために内部横断的、かつ必要に応じて外部の有識者を含めた委員会を設置しており、これらの情報開示をすることが必要である。

 

5.補充原則4-3⑤

★意見:次の補充原則の追加(赤字下線部分

補充原則4-3⑤

取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティをめぐる取組みについて、基本的方針のもとにサプライチェーン全体を含めた実行がなされているかを監督すべきである。

 

★理由

取締役会の役割・責務について、補充原則4-2②でサステナビリティをめぐる取組みについての基本方針の策定はあるが、監督については補充原則がないことから追加が必要である。

 

6.補充原則4-8④

★意見:次の補充原則の追加(赤字下線部分

補充原則4-8④

 独立社外取締役は、サステナビリティに係る課題を取締役会に適切に反映させるために、サプライチェーン全体に関わる社会・環境課題の動向やステークホルダーの意見の情報収集、認識共有を図るべきである。

 

★理由

サステナビリティに係る課題については、内部だけでは知り得ないことも多く、独立した立場である社外取締役の有効活用として、上記補充原則の追加が望ましい。

 

7.補充原則4-11①

★意見:本案に賛成であるが、下記の一分追加(赤字部分)が必要である。

補充原則4-11①

取締役会(監査役等を含む)は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役及び監査役等性別・年齢・国籍知識・経験・能力(ESG/SDGs等のサステナビリティに関わる専門的能力・DX能力・サイバーセキュリティ対応能力等を含む)等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役・監査役等が有するスキル等の組み合わせを、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

 

◆理由

取締役会の機能発揮のために取締役のスキル・マトリックスとして開示することは有効と考える。また、そのスキルについては、女性の活躍推進やグローバル企業における外国人採用、さらには近時強く要請されるESG/SDGs等のサステナビリティに関わる専門的能力、DX能力及びサイバーセキュリティ対応能力等が求められ、「投資家と企業の対話ガイドライン(改訂版)」の1-3にもこれらの内容が記載されている。

さらに、取締役のみならず監査役も含めたスキル・マトリックスにするとした方が明快である。

以上

 

 

 

 

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