日時:2015年1月18日(日)15:00-
場所:CSOネットワーク会議室(新宿区西早稲田)
1. 「英国での地域研究」報告
スコットランド・ハイランド地域におけるLEADERプログラムの受容
―内発的農村発展戦略の論点―
宮地忠幸(国士舘大学 文学部史学地理学科 地理・環境専攻 准教授)
調査地の説明
ハイランド地域はUK/EUの周辺的地域。広大な土地で人口密度が低い。地域コミュニティの活動が盛んである。
EUにおける「新しい農村開発」の背景
1980年代の共通農業政策(CAP)改革により、農業構造政策(部門政策)から農村振興政策(領域的政策)へシフトした。1988年に欧州委員会で「農村社会の未来」が公表された。ここでは、①ボトムアップ方式、②政策連携、③地域的なパートナーシップの重視、が挙げられた。LEADER(Laisons Entre Actions de Developpment de I’ Economie Rurale)とは農村経済開発における活動の連携のこと。
LEADERの窓口:LAG
LAG (Local Action Group)は自治体、コミュニティ、民間企業、個人のパートナーシップによって設立。地域資源のポテンシャルを高め、最大限に活用することが目指されている。
Highland Councilでのヒアリング
設立は2002年。LEADER Programmeのマネジメントに第4期(2007~2013)から関わっている。役割は、EU農業委員会からの補助金の受け容れとLAG等への配分。LEADER programを含めて350のプロジェクトが実施されており、内容は多様。
(視察先の紹介)
Local Area Partnershipについて
ハイランドの中にある11の地域をまとめている。開発計画の策定と実行、ローカルスケールでのLEADERプログラムの促進、LEADERプログラムのサポートを受けるローカルプロジェクトの決定など。
新たに生まれたLocal Enterprise Partnership (LEPs)
2011年4月設立。地域における社会資本整備の優先順位を決定する。コミュニティ、地域自治、ビジネス、新技術の導入などを創出。39のLEPsが設立されている。
農村の持続性と社会的紐帯
パートナーシップとネットワークが重視されてきた。
何が+の紐帯か?(旧住民と新住民、異なる事業主体がもつ社会的紐帯の量、質)
質疑応答
Q: LAGの活動資金はEUの農業委員会からのみなのか?
A: EUの農業委員会からのみではないが、プロジェクトごとの活動については資金源が明らかではない。
Q: 自治体との関係は?
A: 自治体が絡んでいることもあるが、基本的には自治体から独立してやりたいということ。
Q: ハイランドで人口が増加しているというのはどの部分なのか?イギリス全体で見ても増加しているので、田園回帰といえるのか?
A: 詳しくは分からないが、近年はスコットランドの増加が目立つ。
コメント:田園回帰の動きがスコットランドにも出てきているともいえる。
コメント:日本の田園回帰には3つの要素がある。それは①団塊世代、②Iターン、③マイルドヤンキー。①は地域にうまくはいっているところもあればそうでないところもある。②は一番注目されている。③は、地元が好きで外に出て行くことが好きではない若者のこと。彼らは自然が好きで地元が好き。新しいことがしたいわけではなく、これまで守ってきたことを大事にしている。3者を上手く地域づくりに活かしていけばいいのではないか。
コメント:内発的発展といっても外からのアクターを除外するのではなく、外と関わることによる変革の必要な時がある。ただ、農家は外からのものに壊された経験の方が多く、安定を求める農家の姿勢を保守だとみなすべきではない。
コメント:米価の決め方のプロセスに問題があると感じている。消費者に知識が乏しく、米は高価と思われている現状の中、雰囲気で米価が決定している。