地域密着中小企業事例6
背振の森と人とともに未来へ
株式会社大島産業
革新的なアイデアと地域との連携のもと、一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬・処分事業を通じ、廃棄物の再資源化や省エネルギーの推進に取り組んでいる株式会社大島産業。営業部長の片山陽平氏、営業課長の森崎淳二氏、営業部の初村有稀子氏にお話を伺った。
ヒアリングから見えてきた気づき
地域に密着した中小企業の持続可能性向上に繋がる取り組みのポイント・必要とされるサポート
・株式会社大島産業は経営層含めスタッフが若いことが強みとなっている。リサイクル、環境問題にチャレンジしているという事業は、若い層ほどバイアスを持った見方をしない傾向がある。SDGsとの紐づけた事業の再整理などあらためて持続可能性からの事業の捉え直しを行い、報告書やパンフレットなど広報資料を用いることでさらに社会への発信力が強化するのではないだろうか。
・昨今の自然災害の増加等の影響も受け、他の事業所が焼却炉をたたむというケースも増えており、株式会社大島産業においてもますます忙しくなっていると思われる。より活用しやすい新しい事業展開や既存の事業の今後の展開を考える上でも市場調査の視点でのサポートの枠組みが求められている。
SDGsとの連関
食品残渣による飼料生産という食品循環のシステム化に関する取り組み、最終処理場のある地域における地域の人々と一緒になった森づくりなど、環境への配慮と地域への貢献を含む株式会社大島産業の事業はSDGsのゴール5、7、8、9、12、13、15、17などの達成に貢献する取り組みである。
背振の森と人とともに未来へ
株式会社大島産業
◆創業からこれまで
次世代の地域貢献を目指して
初代会長がレンタカー業を創業後、昭和48年に当時の三田川町(現在の吉野ケ里町)からの委託により一般廃棄物の運搬を開始した株式社大島産業。当時は地域貢献の一環として引き受け、参入した事業は、現在、リサイクル事業、一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬、中間処理、最終処分業務など幅広いものとなっている。さまざまな廃棄物処理に関する需要には現場から出るアイデアを活かし対応しており、2代目社長の機械好きが高じて収集された機械も役立っているという。例えば、ペットボトルの飲料ボトルと液体を分別する「破袋分別機」はその好事例で、限界のある手作業による分別に対し、機械を使うことで大幅に効率が改善し、リサイクルの実現の可能性が広がった。
平成28年に就任した3代目の代表取締役 大島権人氏は現在35歳。2代目や先輩の従業員たちがまだ現役のうちにとの思いから、早めに代表取締役の継承がなされた。世代交代の際には、数名の若手メンバーで今後の展望について勉強会を数度行い、企業理念を見直すなど全体的な組織文化の改変があったという。
◆従業員に対する取り組み
仕組みを変えるために出来ることを
現在の従業員90名は、ドライバーが大半を占め、男性が多い職場であるが、女性も少しずつ増えてきている。営業部の初村有稀子さんは、今年、新卒で入社。横浜で生まれ育ち、横浜の大学を卒業したが、大島産業の事業に魅力を感じ、ご両親の出身地である佐賀県での就職を決意した。もともと、環境問題やフェアトレードなど持続可能性に関するテーマに関心があり、大量消費の仕組みを変えることは簡単なことではないが、自分に出来ることはないだろうかと考えていたことが大島産業への入社のきっかけになったという。
◆環境に対する取り組み
ゴミを処理から、飼料を製造へ
隣接する九州食品工場(九州食品リサイクル事業共同組合)とともに、食品残さ飼料(エコフィード)生産のシステム化に取り組み、食品循環にも注力している。食品関連事業者からでるパンくずやめんくずなどを家畜用の飼料へと生まれ変わらせるという食品循環のシステム化を実現している。工場では、廃棄物の焼却施設から発生するエネルギーを乾燥エネルギーに置き換えることで低コストの飼料生産となっている。収集時から食品残さの温度管理を徹底し、原料の栄養価に配慮した2種の乾燥工程により、安全で質のある飼料づくりを行っている。生産された飼料の販売先は営業努力をする中で、販路の拡大に至ったが、近隣に養豚業が盛んな宮崎県・鹿児島県があり、地理的な比較優位も活かされている。
◆地域・社会に対する取り組み
実り多き森、四季を感じる森を目指して
大島産業では、「地域の理解がなくては成り立たない、地域あっての自社である。」との思いから、創業以降、地域への還元として、さまざまな取り組みを行っている。蜂蜜の採取が目的ではなく、背振の森をより豊かにしていきたいという思いから、日本ミツバチの養蜂に挑戦。また背振の山にはさらに豊かな樹々をとの思いから、地域の方々の協力も得ながら広葉樹や落葉樹、果実樹などの植林活動を行ってきた。
◆今後の展開
大島産業としてのSDGs貢献を
中小企業支援に関しては、「時間的にも人員的にも市場調査を行う余裕がない。金銭的なサポートがあるといいかもしれない。研究開発に向けた研究機関との連携の橋渡しなどの支援もあると良いかもしれない。」と希望する。
大島産業の事務所及び応接室の入り口にはSDGsの17ゴールのロゴが掲示されている。「SDGsについては、業界内の勉強会など中で頻繁に話題になっている。まだ全社的な意識付けやSDGsと事業を紐づけた発信はできていないものの、SDGs達成に向け、大島産業としての貢献はできると思っている。」と語った。
(ヒアリング実施日:2019年7月12日 ヒアリング協力:株式会社Green prop)
企業情報
会社名 | 株式会社大島産業 |
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会社設立日 | 昭和50年1月27日 |
代表取締役 | 大島 権人 |
本社所在地 | 佐賀県神崎郡吉野ヶ里町吉田2469-1 |
資本金 | 2,000万円 |
事業内容 | ・一般廃棄物収集運搬処理処分業務・汚水処理施設維持管理業務 ・水質検査・試験業務代行・簡易専用水道衛生管理業務・造園設計管理業務 ・下水管渠の浚渫、道路のマンホール集水桝等の泥、砂等の除去 ・産業廃棄物収集運搬処理処分業務/自社管理型最終処分地有 ・雑排水槽(厨房ピット)等の清掃補修維持管理業務 ・ビルサービス業務・リサイクルプラント設計製作 |
従業員数 | 90名 |