地域密着中小企業事例7

「循環型の“まち”をつくり、地域を活性化する」を使命に

鳥飼建設株式会社

https://torikai-grp.com/

多角的な事業経営を通じて、地域活性化に取り組む鳥飼建設株式会社。基山町を活性化したいという強い思いと継続した学びの姿勢を従業員に示し、まちづくりと人づくりに全力投球する代表取締役の鳥飼善治氏にお話を伺った。

ヒアリングから見えてきた気づき

地域に密着した中小企業の持続可能性向上に繋がる取り組みのポイント・必要とされるサポート

柔軟な就業形態、採用基準、学びによる人材育成、キャリアステップの可視化など、人づくりに対するポリシーを持ち、社会に通用する人材育成を明確に示すことが、鳥飼建設株式会社のCSRの推進のみならず、求職者へのアピールに繋がり、多くの中小企業が課題とする採用に関してポジティブな効果が出ている。中途採用に関するホームページには、求職者の家族に対するメッセージを掲載するなどさまざまな工夫も凝らされている。

SDGsとの連関

地域の実情に合わせた柔軟な就業形態による雇用の創出や、地域活性化につながる農業事業、全ての従業員が学び続けることを通しての持続可能な組織づくりへの取り組みは、SDGsのゴール4、5、7、8、9、11、17などの達成に貢献する取り組みである。

「循環型の“まち”をつくり、地域を活性化する」を使命に
 鳥飼建設株式会社

◆創業からこれまで
基山町を活性化したい

昭和39年に先代がブロック工業として創業。顧客から施工までの対応を求められたことをきっかけに土木から建設までを行う鳥飼組を設立。その後、鳥飼建設へと社名を変更。現在、2代目の代表取締役を務める鳥飼善治氏は、大学卒業後の昭和56年に入社し、昭和63年に先代より事業を継承した。以降、子どもの頃から組織図を描くなど、組織づくりに関心があったという鳥飼氏は「お客様に喜んでもらい感動してもらう」を理念に、「循環型の“まち”をつくり、地域を活性化する」を使命として多角的な事業経営に取り組んできた。

人口減が進む基山町の活性化には雇用の創出が必要と、企業誘致や移住者の住居建設にも携わった。学校や図書館建設など、まちのシンボルとなる建物の建設に関わるとともに高齢化社会に必要となるグループホームの設計も行う。また建設業だけでなく、グループ会社では、土地の仕入れや農業も行っている。

◆従業員に対する取り組み
働き方改革と仕事の成果を両輪に

従業員には、働き方改革に伴うワークライフバランスに配慮した勤務体系を提供するだけでなく、それとともに、仕事の成果もしっかり出してもらうことを求めている。働きやすさと仕事の成果は車の両輪という考え方である。言葉で思いを伝えることももちろん大事だが、働く上での具体的な将来像の見える化もしていきたいと考え、昇格する際に会社として重視するポイント(理念や目標)や、各ポジションへのステップを明確に整理したキャリアトラックを整備しているところだ。

以前は堅実経営(借金をしない)をモットーにやっていたが、生産性を上げるための新しいシステムの導入も積極的に行っている。現在、従業員は55名。グループ全体で女性の採用が増えてきているという。就職ウェブサイトからのエントリーやインターン等を通じ、新卒は毎年大卒3~4名を採用しており、半分以上は女性の採用になりつつあるという。地元で働きたいという地元出身者や地域づくり・まちづくりのビジョンに惹かれての志望者も多い。中途採用については、募集業種に応じて採用の基準を変え、採用後に適材適所の配置を行い、資格取得を支援するなど柔軟な対応を心がけている。ここ数年は65歳以上も積極的に採用しており、技術者やゼネコン経験者を6名程、採用した。

◆環境・地域社会に対する取り組み
農産物の生産、自然素材の家づくりを通じ、地域の未来づくりに貢献

鳥飼建設グループ全体の事業を通じて、地域社会に貢献し、環境に配慮したさまざまな取り組みを行っている。もともと鳥飼家が農家であったということもあり、農業を通じての地域活性化をとの思いがあり、グループ会社に農業法人のきやまファームを設立した。きやまファームでは、地域の協力者と連携し、オーストリア原産のエミューというダチョウに似た鳥を飼育し、エミューの肉を使った商品の開発やその通信販売を通じて、6次産業化に取り組んでいる。また、エミューの堆肥を活用した菊芋づくりを行うなど、循環型の取り組みを推進している。

住宅事業では、自然素材を使った家づくりに取り組んでいる。事業をはじめたきっかけは、伝統的な素材の方が日本の気候に合っていて快適ということもあったが、最近の子どもたちのさまざまな問題はシックハウス症候群に見られるような建材の影響による部分も大きいのではないかと考えたためだったという。

◆今後の展開
学び続けることが持続可能性の源泉

鳥飼氏は、「専門的な学びも必要だが、人格の部分、人間としての器を磨き広げることが大事だ。従業員とともに学び続け、人づくりを一緒に進めていきたい」と強調した。同社では、従業員との価値観の共有を大事にしており、入社後に外部セミナーで学ぶことを入社条件とし、研修受講後は社内共有の場も設けている。「後継者にも学ぶ社風を引き継いでいきたい。変化に対応できる柔軟な思考を大事にしていきたい。人づくりを重んじ、学びに対する継続的な支援があることは長期的な会社の成長に繋がると信じている。学び続けることが持続可能性の源泉ではないだろうか」と語り、鳥飼氏自身も「会社は社長の器以上にはならない」と自らの学ぶ姿勢を従業員に示している。

(ヒアリング実施日:2019年7月12日 ヒアリング協力:株式会社Green prop)

企業情報

会社名 鳥飼建設株式会社
会社設立日 昭和55年9月1日(創業:昭和39年3月28日)
代表取締役 鳥飼 善治
本社所在地 佐賀県三養基郡基山町宮浦991-2
資本金 2,000万円
事業内容 ・住宅事業(トリカイホーム)(NATUR-saga)
・建築工事一式(県Aクラス) 公共建築工事・民間建築工事
・土木工事一式(県Aクラス) 公共土木工事・民間土木工事
・土地活用事業(高齢者・障がい者住宅研究会)
従業員数 55名
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