現状
日本では、2018年ころから大企業を中心に、各種レポートで、あるいはWebで、SDGs(持続可能な開発目標)のカラフルなアイコンを示す例が増えている。このアイコンは、2015年に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれたSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標を表すものである。
アイコン等によって、企業がSDGsに取り組み、それらを社会にわかりやすく提示することは、消費者にとっては商品やサービスの選択に、投資家にとってはESG投資の選択に、個人にとっては就職先の選択に、有益な判断材料として機能するものである。
課題
企業の情報提供は、ステークホルダーとのコミュニケーションに重要な役割を果たすが、問題は「情報の信頼性」である。なぜなら、ステークホルダーと企業との間には情報の非対称性と言われる実態が存在するからである。提供される情報は企業に依存し、ステークホルダーはその情報の正確性や適切性を判断できる情報をほとんど持たないことから、企業の出す情報の信頼性が問われることになるのである。
もし企業の提供する情報が不正確・不適切であったとしたら、消費者の商品選択の判断、あるいは投資家の投資の判断に誤りが生じることになり、それは、一個人の損害にとどまらない、市場の健全性や持続可能な社会の実現をも阻害することになりかねない。
環境に関しては1980年代後半ころから、NGOによってグリーンウォッシュが問題視されていた。つまり環境にやさしい、環境に配慮しているかのように見せているが、実際にはその根拠がない、無関係であるなどの場合に指摘されている。SDGsについてもグリーンウォッシュと同様のことが起きてはいないだろうか。SDGsに取り組んでいるように見えるが、実態を伴っていない広告・表示をしているのではないかとの懸念の声も挙がっている。
提言
企業はSDGsウォッシュにならず、信頼できる情報提供をするためには、どのようにしていけばいいのだろうか。「SDGsコミュニケーションガイド」(電通発行)(*1 )では、「根拠がない、情報源が不明な情報を避ける」、「事実よりも誇張した表現を避ける」、「言葉の意味が規定しにくいあいまいな表現を避ける」、「事実と関係性の低いビジュアルを用いない」などを挙げている。まずは、これらの基準を参考に、自社の情報提供のあり方を見直し、問題の広告・表示を是正していく必要があるが、根本的には、企業は広告表示のあり方を検討し、さらに適切な広告・表示にしていくための仕組みづくりこそが重要である。上述のガイドがステークホルダー作成委員会にもとづき作成されたように、影響を受けるステークホルダーを自社基準の作成や検証などに参画する仕組みの構築も考えられる。
*1「https://www.dentsu.co.jp/csr/team_sdgs/pdf/sdgs_communication_guide.pdf
なお、このガイドの作成委員会にCSOネットワークの前事務局長も参画している。
一般財団法人CSOネットワーク
代表理事 古谷由紀子