10月27日(水)にCSOネットワーク主催オンラインセミナー『ハンドブック「ケースから考える『ビジネスと人権』」発刊記念セミナー: 自分ごとの「ビジネスと人権」 ~個人が尊重される社会の実現に向けて、私たちに求められる行動とは~』を開催しました。
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が国連人権理事会で策定されて、今年6月には10年が経過しました。日本政府による「ビジネスと人権」に関する国別行動計画(NAP)が2020年10月に公表され、今月で1年を迎えました。世界では、⼈種、ジェンダーなどによる差別、気候変動によるぜい弱な⼈々への影響、経済活動がデジタル化し、企業や個⼈を取り巻く環境が変化する中でのプライバシー侵害への懸念など、ビジネスが⼈権にあたえる影響への懸念が⾼まっています。⽇本においては、SDGs(持続可能な開発⽬標)への取り組みに熱⼼な企業も増えていますが、SDGsの中核である⼈権についての理解はまだまだ限定的です。
CSOネットワークでは、これまでのサステナビリティへの取り組みの蓄積とネットワークを活用し、個人が尊重される持続可能な社会づくりが推進されることを願い、ビジネスにおける人権尊重が促進される社会を目指すためのハンドブック「ケースから考える『ビジネスと人権』~個人が尊重される社会を目指して~」を9月1日に発刊いたしました。本セミナーでは、「ビジネスと人権」を取り巻く課題について、それぞれの立場、そして個人として、自分ごとにし、取り組むためには、どのような視点が欠かせないか、どのような行動が求められるかについて、さまざまな立場で企業に関わる方々を迎え、マルチステークホルダーで議論しました。
話題提供①「企業の取り組みから見る人権視点の浸透の現状」Social Connection for Human Rights 共同代表 佐藤暁子氏
佐藤様には、「企業の取り組みから見る人権視点の浸透の現状」と題し、「ビジネスと人権」の取り組みを推進する専門家のお立場から、事例を交えつつお話をいただきました。まず、人権への取り組みでまず考えたいことを具体的な視点を上げながらお話いただき、人権の取り組みは社内に浸透しているか、ということについて、例えば、障害者の権利やダイバーシティ&インクルージョン、気候変動やミャンマーについてなど、社会を取り巻く動きや企業の対応からどう考えていくべきかといった示唆をいただきました。企業の取り組みで不十分な点についても例を挙げて解説いただいたほか、それぞれが日々のアクションにつなげるためにどんなことから取り組んでいけるかといったヒントもお話いただきました。
話題提供②「SDGsウォッシュを増やさないために必要なこと」朝日新聞社 編集委員 北郷美由紀氏
北郷様には、「SDGsウォッシュを増やさないために必要なこと」と題し、朝日新聞社にて、SDGsに関する紙面企画などをご担当されているお立場から、SDGsとビジネスと人権との関係や、企業と人権に関する動きについてお話をいただきました。SDGsの目標に上げられた課題は根っこがつながっており、統合的に取り組んで解決していくといったSDGsを捉えるうえでの基本的な視点として、人権は背骨である、といったお話から、企業と人権を取り巻く動きとして、デューディリジェンスの義務化や、日本において昨年、策定がなされたビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)について、課題や策定の背景についてもお話をいただきました。21世紀は人権の世紀であり、ウォッシュを見抜く、しない、させない、未来への責任があるということについても具体的な例をあげてお話をいただきました。
パネルディスカッション「企業、個人として「ビジネスと人権」を自分ごと化にするために何が必要か」
2つの話題提供に続き、清水建設株式会社 人事部人権啓発グループ 橋川隆則様、国際労働機関(ILO)駐日事務所 プログラムオフィサー(渉外・労働基準専門官) 田中竜介様、佐藤暁子様をパネリスト迎え、CSOネットワークの代表理事 古谷由紀子のファシリテートのものと、「企業、個人として「ビジネスと人権」を自分ごと化にするために何が必要か」をテーマとしたパネルディスカッションを開催しました。橋川様、田中様には、それぞれの立場においての「ビジネスと人権」に関する取り組みや課題をご紹介いただくとともに、自分ごと化していく上での視点についてもお話をいただきました。パネルディスカッションの後半では、北郷様にも加わっていただき、参加者から寄せられた様々な質問やコメントにお答えいただき、活発なディスカッションが行われました。
今回のセミナーには、全国各地から、50名を超えるさまざまな立場の方にご参加をいただきました。また、セミナーと平行して静岡で開催ていた「ビジネスと人権 学習会」にも様々な方にご参加いただき、静岡会場からも複数の質問を寄せていただきました。
セミナー終了後の参加者アンケートからは、「人権をめぐる状況と課題が良く分かりました。」「人権に対する意識が低いことを課題として捉え、同じ悩みを感じている方が多いことが共有でき有意義でした。」という声などが聞かれました。
引き続きCSOネットワークでは、「ビジネスと人権」に関する取り組みの推進について、さまざまな立場の方と連携しながら取り組んでいきたいと考えています。
セミナーの最後のお知らせした12月発刊予定の新しいハンドブックについてもどうぞお楽しみに!
★今回のセミナーの動画はCSOネットワークのYouYubeチャンネルで期間限定(2021年11月30日公開終了)で公開しております!
【2021年11月30日追記】録画の公開を終了しました。
本事業は、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施しています。