皆さん、こんにちは。サステナビリティコミュニケーターの梁井です。皆さんはシーフードは好きですか?
今回の『ケースから考える「ビジネスと人権」ライブラリー』では、シーフードをテーマに取り上げます。私たちの毎日の暮らしの身近にあるシーフードと「ビジネスと人権」とのつながり、課題についてご紹介していきたいと思います。
先日、CSOネットワークの事務局長が講師を務めている横浜市立大学金沢八景キャンパスの生協食堂で、国内の大学では初めてとなるMSC/ASC CoC認証に対応した「サステナブル・シーフード」を使用したメニューの提供を開始したというお知らせがありました(*1)。MSC/ASC CoC(Chain of Custody)認証とは、加工、流通の過程で認証水産物と非認証水産物の混入を防ぎ、適切に管理することを目的とした認証です。今回の取り組みは、水産資源や環境に配慮し適切に管理されたMSC認証を取得した漁業で獲られた水産物や、環境と社会への影響を最小限に抑えたASC認証を取得した養殖場で育てられた水産物であるサステナブル・シーフードの活用を通じて、SDGsへの貢献をしたいと立ち上がった学生のプロジェクトにより実現したということです。
このサステナブル・シーフードについての取り組みは、いま、様々な形で広がっています。この背景には、世界の水産資源の危機問題、そして、IUU(アイ・ユー・ユー)漁業と呼ばれる、違法(Illegal)・無報告(Unreported)・無規制(Unregulated)な漁業の問題などがあります(*2)。現在、世界全体の13~31%の漁獲量がIUU漁業によるものと言われており、日本にとっても他人事ではなく、日本の輸入水産物の24~36%もIUU漁業に由来しているという報告もあるそうです(*3)。IUU漁業は、正規の漁業者に経済的損失をもたらすだけでなく、海洋資源の枯渇を加速させます。さらに労働者についての人身売買、無報酬に近い低賃金、劣悪な環境での長時間の強制労働といった現代奴隷の被害者は世界で4000万人以上にのぼると推定されているなど、人権問題も指摘されています。
このようなシーフードをめぐる課題に対しても、「ビジネスと人権に関する指導原則」の枠組みで考えると、企業はどのように責任を果たしていけばよいのか、被害者の救済にどう向き合っていくべきなのか、国の義務として、何を期待し、求めていくべきなのか、そして、消費者としての私たちは何に着目して行動していくべきなのかが見えてくるのではないかと思います。CSOネットワークのハンドブック『ケースから考える「ビジネスと人権」』や、動画によるナビゲーションなども参考に、毎日の食卓に並ぶシーフードからサステナビリティを考えてみませんか。
『ケースから考える「ビジネスと人権」ライブラリー』、次回もお楽しみに。
(参考)
*1:国内大学初!食堂でMSC/ASC CoC認証メニュー 「サステナブル・シーフード」の提供を開始します ~学生によるSDGsの取組「サスシープロジェクト」~(横浜市立大学)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2022/20220506sasusiproject.html
(チラシの掲載をご快諾いただいた横浜市立大学 学生部さま、生協さま、学生団体「TEHs」の皆さま、ありがとうございました!)
*2:IUU漁業について(WWFジャパン)
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/282.html
*3:日本はワースト19位 IUU漁業リスクを下げるには?(SEAFOOD LEGACY TIMES)
https://times.seafoodlegacy.com/archives/6717.html
ハンドブック『ケースから考える「ビジネスと人権」』
デジタル社会、気候変動、マーケティングという3つのケースをもとに、「ビジネスと人権」に関する「問題」に気づき、人権の主体である人々と「対話」し、広く問題を「解決」していくためのナビゲーションを提供しています。 詳細はこちらのページをご覧ください。
CSOネットワーク YouTubeチャンネル「10分でわかる『ビジネスと人権』」
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