Q1:あなたが発展的評価研修に参加したのは、どういう思いやきっかけがあったからですか?
私は直接支援の現場にも立つとともに、中間支援者としてNPOの伴走もしているので、自分に評価という「武器」を増やしたいと思いました。研修では、これまで経験や感覚に頼っていた部分を体系立てて整理し、スキルや知識の効果的な組み合わせを学ぶことができました。また、これまでの自分のやり方と発展的評価の共通点を見つけることもできたと思います。
Q2:研修中やその後を含め、発展的評価を実践してみてどうでしたか?評価者としての手ごたえや団体側の反応、変化などがあれば教えてください。
従来型評価と比較すると、発展的評価は団体の主体性と議論を重視する点に特徴があると思います。
実習では、NPOに対して「なぜ事業を評価したいのか」「どのような価値を大切にしているのか」「やりたいことと社会的なニーズの合致点はどこか」といった議論を促すことを大切にしました。合意形成のプロセスが発展的評価の要とも言えるかもしれません。
こうした丁寧な議論を経たからこそ、NPO側からも「自分たちでデータを収集しよう」「この項目も聴いた方がいいんじゃないか」という前向きな姿勢が現れ、活発な議論がメンバー内で交わされるようになったのだと思います。
評価者である私の役割は、問いかける、待つ、整理するというファシリテーションです。だからこそ、どのような問いかけをどのタイミングでするかという見極めを一層大切にするようになりました。
Q3:評価者として団体にかかわる時、あなたが一番大切にしていることは何ですか?その理由は?
まず、決めるのは私ではなく団体側であるということ。私の役割は、意思決定の材料を揃えることです。私の現場に対する理解の深さは強みであると同時に、伴走評価の際には団体から答えを奪うリスク要因になり得ることも自覚しています。ですから、評価者の立場では意識的に「問いかけモード」に入るようにしています。
問いかけて待つ、という姿勢を大切にするのは、大学時代に音楽イベントのプロジェクトを取りまとめた経験から来ているように感じます。当時、イベント自体は成功させたものの、仲間との距離感が少しぎくしゃくした苦い思い出があります。私は皆が決めるサポートをするように心がけていたものの、実際は口を出しすぎていたのですね。若かったです(笑)。そこからファシリテーションに関心を持ち、合意形成の進め方に向き合いました。失敗を糧にして今のスタイルをつくってきたと思います。
もう一つ大切にしていることは、「おもろいやん」と言って団体の背中を押してあげること。私は高校生の時に初めて広報誌やイベントの企画に関わり始めたのですが、迷いながら活動を進めていた当時、若者支援団体の職員がいつも「おもろいやん」と励ましてくれたことが、とても力になりましたから。
Q4:NPOなどの事業者は、良い評価や伴走支援にめぐり合うためにどうすればよいと思いますか?
NPOが悩みを抱えた時に利用するのは、地元のNPO支援センターです。そこに評価の基礎や伴走者を紹介できる中間支援者がいないと、現場と評価はなかなか結びつきません。評価に馴染みがないNPOにとっては、たとえ実際には評価が有力な処方箋でも、そもそも評価という選択肢が思い浮かびませんから。リアルでもネットでも、団体と評価者をきちんと結びつけるシステムをつくる必要があると思います。
評価は決して堅苦しいことではありません。評価に苦手意識があるNPOには、「よい評価をすれば、ちゃんとよい結果がついてくるよ」と伝えたいですね。
(聞き手:事務局 清水みゆき)