【2012年7月2日　ニューヨーク（米国）発】貧困、スラム、水というミレニアム開発目標（Millennium Development Goals＝MDGs）の3つの重要な目標が、それぞれに設定された数的指標に到達して達成されたことを受け、国連の新しいレポートは、2015年の期限まで残された目標を達成するためには、真のグローバル・パートナーシップが必要であることを強調している。

「2012年のMDGsレポートは目標達成に向けた国際的な進捗の“過去最も包括的な絵”を示している」。潘基文・国連事務総長は国連経済社会理事会（UN Economic and Social Council＝ECOSOCの年次総会において各国閣僚級のほか、国際機関の執行部、NGOなどが参加するハイレベル・セグメントでのレポート発表に際してこのように発言した。

「レポートは、残された目標の達成は容易ではないが、各国政府が過去10年間の約束を放棄しなければ十分に達成可能であると明言している。さらなる達成はMDG8の“開発のためのグローバル・パートナーシップ”が満たされるかどうかにかかっている」と潘氏はレポートの前文において見通しを示した。

「多くの先進国を悩ませている昨今の経済危機が、これまでの進展を後戻りさせたり、歩みを遅くするようなことがあってはならない。これまでの達成をもとに物事を進めよう。そして、MDGsが達成されるまで取り組みを弱めないようにしよう」。潘氏はこう続けた。

2012年のレポートは、MDGs達成を近づける次のような達成があったことを示している。

• 貧困課題に関する統計とその傾向のモニタリングが開始されて以来はじめて、もっとも貧困率の高いサハラ以南アフリカを含むすべての発展途上地域において、極度の貧困下で生きる人々の数と貧困率がともに低下した。
• 予備推計によると、2010年に1日1.25米ドル以下で生活する人々の割合は1990年の同値と比較して半数以下に低下した。これは、「極度の貧困率を1990年から半減する」というMDG1が、国際レベルでは2015年の期限を待たずに達成されたことを意味する。
• 安全な飲料水へのアクセスを持つ人々の割合は、1990年時の76%が2010年時には89%へと上昇している。これは、「安全な飲料水を持たない人々の割合を半減する」という目標が、2010年に達成されたことを示す。
• 発展途上地域の都市においてスラムに住む人々の割合は、2000年の39%が2012年には33%に低下した。2億人以上の人々が改善された水源、改善された衛生施設、もしくは衛生的または人口過密ではない住居へのアクセスを手に入れた。この達成は、「少なくとも1億人のスラム居住者の生活を劇的に改善する」という目標を上回る。
• 国家単位および国際的な取り組みの結果、特に2000年以降、初等教育レベルでは世界中で多くの子どもたちが学校に通えるようになった。女子は特に大きな恩恵を受けている。1999年時点では100人の男子に対して91人の女子が通学していたが、2010年には97人が通学している。
• 就学年齢における初等教育就学率はサハラ以南アフリカで際立って向上しており、1999年の58%が2010年には76%に上昇した。
• 2010年末には、発展途上地域において6500万人の人々がHIV/エイズの抗レトロ治療を受けており、過去これまでに年間最も大きな増加だったと考えられている。

「これらの結果は、人びとの抱える困難が劇的に減少したことを示すとともに、MDGsに明記された世界に近づいていることの確かな証明である」と潘氏は述べた。「しかし、休んでいる場合ではない」。

潘氏は、このままでは2015年において、世界中で6億人以上の人々が安全な飲料水にアクセスできず、およそ10億人の人々が1日あたり1.25ドル以下で暮らし、お母さんは子どもの誕生時に不要な死に見舞われ続け、治療可能な疾病によって子どもが苦しむ、または、命を落とすとの見通しが示されていることに触れた。

同レポートは、2015年の期限は近づいており、残された目標を達成するためには、政府、国際社会、市民社会、民間セクターがそれぞれの貢献を強める必要があると警鐘を鳴らしている。

▼レポートのダウンロードはこちら（PDF）
The Millennium Development Goals Report 2012
http://www.un.org/millenniumgoals/pdf/MDG%20Report%202012.pdf

出典：UN News Center
原題：Global partnership key to achieving Millennium Development Goals by 2015 – UN report
URL：http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=42372&Cr=mdg&Cr1=