【2013年1月18日 ヨハネスブルグ(南アフリカ)発】2015年以降の開発枠組み、いわゆるポストMDGs開発アジェンダに関する議論が本格化している。しかし、複数の議論や対話が同時に進められており、その全体像は複雑だ。貧困解決のための世界的ネットワークGlobal Call to Action against Poverty(GCAP)の分析から、現状への理解を深め、市民社会として議論に参画する道を探ってみたい。
現在、ポストMDGs開発アジェンダの議論は、大きく分けて5つの流れで進んでいる。
1.テーマ別コンサルテーション(※1)
テーマ別コンサルテーションでは、国連開発グループ(United Nations Development Group=UNDG)が選定した9つのテーマ(格差、保健、教育、成長と雇用、環境と持続可能性、食糧安全保障、ガバナンス、紛争と脆弱性、人口動態)が取り扱われている。有識者や学者、市民社会、メディア関係者などが参加して、意見を述べている。GCAPやその他市民社会組織(CSO)がいくつかのコンサルテーションのとりまとめ役を務めており、関心のある団体、個人の意見を歓迎している。
※1 コンサルテーションとは、「特定の議題について関係者を集めて意見の聞き取りや調整を行う場」のこと。
2.国別コンサルテーション
特定のテーマにはとらわれずに、国単位で行われているコンサルテーション。貧困化に生きる人々や社会的弱者の声を議論に取り入れたり、各国における議論の中心となる政府や市民社会の対話を促進することを目的に行われている。国連と市民社会がそれぞれ主催している。実施状況は国によって異なり、双方がそれぞれコンサルテーションを行っている国もあれば、どちらか一方のみの国もある。
・主催者別の実施状況(GCAPまとめ)(※2)
GCAP、Beyond 2015: 30ヵ国(アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)
CIVICUS、コモンウェルス財団(Commonwealth Foundation): 14ヵ国
国連ミレニアムキャンペーン(United Nations Millennium Campaign=UNMC): 6ヵ国
国連開発計画(United Nations Development Programme=UNDP): 約50ヵ国
※2 上記の他に各国のGCAPが、少なくともヨーロッパの3ヵ国でコンサルテーションを実施している。
3.ポスト2015年開発アジェンダへの提言を行うハイレベルパネル
2012年7月に発表されたこのハイレベルパネルは、2013年5月までにポストMDGs開発アジェンダに対する提言を含む報告書を潘基文・国連事務総長に提出する役割を担っている。パネルメンバーには政府、民間企業、学識者、市民社会および若者の代表など27人が名を連ねており、インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領、リベリアのエレン・ジョンソン=サーリーフ大統領、英国のデービッド・キャメロン首相の3名が共同議長を務める。
ハイレベルパネルは、これまでに米国のニューヨーク(2012年9月)、英国のロンドン(2012年11月)、リベリアのモンロビア(2013年1月)と3回の会合を持った。次回は3月末にインドネシアでの会合が予定されている。
市民社会は共同議長との直接対話を希望しているが、これまでに実現したのはリベリアにおけるジョンソン=サーリーフ大統領との会合のみ。
4.オンラインプラットフォーム
市民の声をポストMDGs開発アジェンダに反映するために、国連と市民社会が協力して2つのオンラインプラットフォームを立ち上げた。これらに寄せられた意見はハイレベルパネルの会合において共有される予定だ。
●My World(http://www.myworld2015.org/)
人々が考える優先順位や視点を集め、新しい開発目標を策定し始めている世界のリーダーたちに示すことを目的とするもの。既存の調査等において貧困化に生きる人々が高い優先順位をつけた16の課題の中から、人々の生活にもっとも影響を及ぼす6つを選択することを呼びかけている。寄せられた意見は、ハイレベルパネルの各会合前にパネルメンバーに届けられる。
●The World We Want 2015(http://www.worldwewant2015.org/)
テーマ別および国別コンサルテーションにオンラインからも加わることができるプラットフォーム。WEB上で活発な議論が行われている。なお、テーマ別コンサルテーションでは、前述のUNDGが選定した9つのテーマに、エネルギー、水の2テーマを加えた合計11のテーマが取り上げられている。
5.市民社会独自の動き
ポスト2015年開発アジェンダの議論の多くは国連プロセスとの関連が深いが、市民社会独自の議論も進められている。2013年3月にはベルリン市民社会センター(Berlin Civil Society Center)主催によるボン(ドイツ)での会議が予定されている。市民社会はこのような機会も活用して、開発政策による影響をもっとも大きく受ける人々の声を際立たせる主張を形づくっていくことになる。
これらに加えて見逃せないのが、リオ+20で素案が作られた持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals=SGDs)に関する議論だ。2013年1月には国連が公開作業部会(Open Working Group)の設置を発表した。この作業部会の公式な参加枠は30だが、現在は70近い国家および地域がこの作業部会に参加している。SDGsとポスト2015年開発アジェンダの検討プロセスは、2013年末までに統合されることが予測されている。
一連の議論は変化が早く、新しい動きがいつ出てくるとも限らない。今後もポスト2015年開発アジェンダを巡る動きから目が離せない。
出典:Global Call to Action against Poverty
原題:Post 2015 - Making Sense of The Process
URL:http://www.whiteband.org/en/blog/13-01-17-post-2015-making-sense-of-the-process