【報告】『人権研修のためのセミナー~効果ある企業内人権教育のために~』 ヒューライツ大阪主催・CSOネットワーク共催

10.23


報告

日時:2015年10月1日(木)14:00~17:00
場所:東京都千代田区日比谷公園1-4 日比谷図書文化館 スタジオプラス 小ホール
内容:前半:レ ク チ ャ ー  “人権研修の現在と未来を考える”
ヒューライツ大阪 前所長 白石理
後半:ワークショップ “「人を大切に」の「活用の手引き」を読み解く”
ヒューライツ大阪 特任研究員 松岡秀紀
主催:一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)
共催:一般財団法人CSOネットワーク

レクチャー 人権研修の現在と未来を考える” (14:10~14:50)
 ヒューライツ大阪 前所長 白石理
企業で行われる人権研修の現状と今後の展望についてお話いただく。「企業の人権に対する意識が変わることで、人々が持つ人権への意識も変わる」ことを強く意識してほしい。
近年、世界のトップ企業といわれる東芝やフォルクスワーゲンで粉飾決算や偽装事件が発覚したが、これらの不祥事は株主への被害というだけでなく従業員や消費者への人権問題としても捉えることができる。

・日本国内で実施されている企業の人権研修の特徴。
日本企業では、“人権”をテーマにした研修は平均して年1回程度、実施内容はレクチャー型が大半であり、形だけの実績に見えるものも多い。
“研修で何を伝えるのか”というように、企業側がその意義を深く考察することが重要であり、また研修の企画者自身が“企業と人権の関わり”をどれだけ理解しているかで研修の結果は全く別のものになる。「とりあえず講義等の研修だけ行えば良いだろう」程度のものでは、従業員に人権の大切さは伝わらない。
「人を大切にする」「社会に貢献する」といった言葉は企業がよく標語として挙げるが、本当に実行できているのだろうか。製造・販売・消費者とつながるバリューチェーンの全ての段階で人権を本当に意識できているのか。
企業が人権研修を行う意義とは何か。それは“信頼”という収益を得るあるいは保持することにある。東芝やフォルクスワーゲンの例を見ても察せられるように、何か問題が起これば企業は信頼を損失する。従業員には一人ひとり権利があり、人権を侵害されればそれを訴える権利を持つ。社内での不祥事を発見すれば告発する権利があり、内部申告通報をきっかけに会社から不当に扱われるようなことがあれば、これも明らかな人権侵害である。

・どのような人権研修を行えば良いか
一般的に、講義型では理解は深まらず、ワークショップ型では、時間がかかり体力も消費するが理解は深まる傾向にある。予算や時間の制約や、業務の支障だと捉える意識、そして従業員の人権意識が高まると部下を扱いにくくなる等の懸念を抱く企業もあるが、人権を考える際、国内で捉えられている人権の概念で考えるのではなく、国際基準に沿った人権を基準に考えるべきである。その上で、社内の問題点を明確化し、社内の人権に関する目指すべきものやあり方を考えていくべき。
国内では「人権=相手の気持ちを考える」「思いやりの心を持とう」という概念が浸透している。しかし、この概念は、国が人権を守るべきところを市民一人ひとりにその責任を転嫁しているだけのように見える。国際基準では、人権を保護するのは国の責任であり、企業はそれを尊重すべきであり人権保護につながる大きな力を持っている、と考えられている。

・ 企業の人権尊重は企業価値を高めることにつながる。
従業員一人ひとりの人権意識が高まることで、顧客との対応に変化が生じる。それは間違いなく、その従業員だけでなく企業価値を高めることにつながり、企業の収益へ結びつく。
その為にも、意義ある人権研修が重要である。

ワークショップ “「人を大切に」の「活用の手引き」を読み解く”(15:00~17:00)
 ヒューライツ大阪 特任研究員 松岡秀紀 
 ワークショップに向けて、企業の人権研修に対する問題意識についてお話いただく。
研修を実施する立場の9割近くの人が「人権は難しい」と感じている。これまで、人権に関する意識はなかなか変わってこなかった。しかし、ここ3~4年人権が非常にクローズアップされており、人権に対する意識を高め広げるチャンスだと言える。

・狙い
人権研修も人材育成という点では、他の研修と同列であるべき。人権研修担当者が想定するテーマとCSR担当者が想定するテーマは、統一的な視点で捉えることができる。

・エッセンス
人権を仕事の中で考えることが基本である。なぜなら人権はあらゆる部門に関係しており、人権を理解することが仕事に役立つから。例えば、営業職では人権感覚のある従業員の方が業績をあげやすいと考えることができる。品質管理にも人権に関する想像力を働かせることが大切である。企業は人権の理解者を育てるべき。ビジネスと人権に関する指導原則の人権デューディリジェンスが後押しをしている。

レクチャー後、3人~4人のグループに分かれ、ワークショップに取り組む。

内容としては、①これまでの人権研修の振返り、それを踏まえた②人権研修の企画 を行い、②をグループ毎に発表し、それに関する質疑応答を行った。

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ヒューライツ大阪 前所長 白石理さん

ワークショップ松岡さん
ヒューライツ大阪 特任研究員 松岡秀紀さん 

ワークショップ風景
ワークショップの様子

発表風景_2
ワークショップ後、各グループより発表を行う
    

 一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)によるセミナーのご報告

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